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東京高等裁判所 昭和34年(く)56号 決定

少年 O(昭一五・一・七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、第一、少年が、被害者に対して、暴行又は脅迫を加えた事実は全くなく、且つ被害者の心神喪失若しくは抗拒不能の状態を利用した事実も全くないのにかかわらず、原判決が、少年の本件所為を刑法第一七七条第一七八条の罪に該るものと認定したのは重大な事実の誤認であり、第二、仮りに少年の本件所為が刑法上の犯罪に該るとしても、本件は全く偶発的犯行であり、少年も悔悟して居り、なお少年にはこれまでに四回程非行歴があるが、いずれもさほどとがむべきものではなく、又少年の両親は少年の改遇改善の方法を具体的に考慮して居り、且つ被害者の側においても少年の処罰を求めていない実状に徴すれば、少年を中等少年院に送致した原決定は相当でないから、その取消を求めるというのである。

よつて記録を精査するに、第一の点については、原決定は、少年が「被害者を押し倒して両手を押えて馬乗りになる」暴行を加えて、強いて同女を姦淫し、その際同女に傷害を与えた事実を認定したのであるが、一件記録に現われた各証拠によれば、右事実は、右暴行の点をも含めて、十分に、これを認めることができ、記録を精査しても、原決定の右認定には重大な事実の誤認があるとは考えられないし、第二の点については、所論にかんがみ、一件記録に現われた少年の年令、性行経歴、生活環境、本件犯行の罪質態様動機等を総合考察すれば、少年を中等少年院に送致した原決定の処分はやむをえないものと認められ、所論のような少年に有利な事情を考慮しても、著しく不当の処分とは考えられない。

以上の次第であつて、本件抗告はその理由がないから、少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条によりこれを棄却することとして、主文のように決定をする。

(裁判長判事 中西要一 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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